プロンプト・テクニック

文章校正・推敲プロンプト集|誤字脱字から論理チェックまで

書き上げた文章をAIに「校正して」と投げたら、誤字の指摘はほとんどなく、代わりに全文が別人の文章に書き換えられて返ってきた——文章チェックにAIを使い始めた方が最初につまずくのがこの点です。原稿が良くなるどころか、確認の手間が増えてしまいます。

この記事では、校正作業を4つのレイヤーに分け、レイヤーごとに指示を分けて実行する方法を解説します。誤字脱字の検出から表記ゆれの統一、読みやすさの推敲、そして論理の破綻チェックまで、そのまま使えるプロンプトを用意しました。

この記事でわかること

  • AI校正が「直しすぎる」原因と、レイヤーを分ける考え方
  • 誤字脱字・表記ゆれを漏れなく検出するプロンプト
  • 意味を変えずに読みやすさだけを改善する推敲プロンプト
  • 論理の飛躍や根拠不足を指摘させるチェックプロンプト

「校正して」だけでは、なぜうまくいかないのか

校正という言葉は、実務では複数の作業をまとめて指しています。誤字の発見、表記の統一、文のリズム調整、主張の妥当性確認——これらは目的も判断基準もまったく違う作業です。

それを一言で頼むと、AIは最も「成果が見えやすい」作業、つまり文章の書き換えを選びがちです。結果として、誤字は残ったまま文体だけが変わり、元の原稿との差分も分からない状態になります。

解決策はシンプルで、レイヤーを分けて1回に1種類だけ依頼することです。あわせて「書き換えた文章ではなく、指摘の一覧を返す」形式にすると、採否を自分で判断できるようになります。

校正の4レイヤーを整理する

どのレイヤーの作業をしているのかを意識すると、指示が組み立てやすくなります。4つの違いを表にまとめました。

項目 レイヤー1 誤字脱字 レイヤー2 表記ゆれ レイヤー3 読みやすさ レイヤー4 論理
見るもの 誤変換、脱字、助詞 用語・記号・数字の統一 一文の長さ、語順、冗長表現 主張と根拠、飛躍、矛盾
判断基準 正誤が明確 社内ルール次第 読者による 文脈と目的による
出力の形 指摘リスト 統一案の表 修正案+理由 質問と懸念点
AIの得意度 やや苦手(見落としあり) 得意 得意 指摘の材料出しに有効
人の確認 必須 ルール適合を確認 採否を判断 最終判断は必ず人

悪い例と良い例を比べる

まずは、書き換えが返ってきてしまう典型的な依頼です。

プロンプト例

【悪い例】
以下の文章を校正して、もっと良くしてください。

(原稿を貼り付け)

「良くする」の基準がないため、AIは自由に書き換えます。レイヤーと出力形式を指定すると、次のように変わります。

プロンプト例

【良い例】
あなたは日本語のビジネス文書を扱う校正担当者です。
本文の書き換えは行わず、指摘のみを返してください。

# 対象とする指摘(これ以外は指摘しない)
1. 誤字・脱字・変換ミス
2. 助詞の誤り(「てにをは」)
3. 主語と述語のねじれ
4. 二重敬語、敬語の誤用

# 出力形式
表:該当箇所(原文を10字前後で引用) / 種類 / 修正案 / 理由(20字以内)
- 指摘がない場合は「指摘なし」とだけ出力する
- 文体や言い回しの好みに関する指摘は含めない

# 原稿
(ここに貼り付け)

ポイント

「本文の書き換えは行わず、指摘のみを返す」の一行が要です。指摘リスト形式にすると、どこをどう直したかが一目で分かり、自分の判断で採否を決められます。原稿の意図が守られるうえ、修正履歴も残しやすくなります。

レイヤー別のプロンプト集

表記ゆれを統一する

表記ゆれは、AIが最も得意とする領域です。社内の表記ルールがあれば、あわせて渡すと精度が上がります。

プロンプト例

# タスク
以下の原稿から、表記ゆれと表記ルール違反を検出してください。
本文は書き換えず、検出結果のみを返します。

# 表記ルール
- 「お客様」で統一(「お客さま」「顧客」は不可)
- 数字は半角。単位との間にスペースを入れない
- 「行う」は漢字、「ください」「いただく」はひらがな
- 感嘆符と疑問符は使用しない
- 括弧は全角( )で統一

# 出力形式
1. 表記ゆれ一覧(表:ゆれている表記 / 出現回数 / 推奨表記)
2. ルール違反一覧(表:該当箇所 / 違反したルール / 修正案)
3. ルールに定めがなく、判断が必要な表記(あれば列挙)

# 原稿
(ここに貼り付け)

意味を変えずに読みやすさだけを上げる

推敲では「何を変えてよいか」より「何を変えてはいけないか」を明示するのが有効です。

プロンプト例

# タスク
以下の原稿を、意味を変えずに読みやすく推敲してください。

# 変えてはいけないもの
- 主張の内容と結論
- 数値、固有名詞、日付
- 段落の順番と構成
- 専門用語(削除も言い換えもしない)

# 改善してよいもの
- 60字を超える一文の分割
- 「〜することができます」などの冗長表現
- 同じ語尾の3回以上の連続
- 修飾語と被修飾語が離れている箇所

# 出力形式
表:修正前(原文引用) / 修正後 / 変更理由(20字以内)
※修正が必要ない段落は表に含めない
※最後に、修正した文の数を1行で記載

# 原稿
(ここに貼り付け)

論理の飛躍と根拠不足をチェックする

最も価値が出やすいのがこのレイヤーです。書き手は自分の思考の流れを把握しているため、飛躍に気づきにくいからです。

プロンプト例

# 役割
あなたは、この文章に予備知識のない読者です。
書かれていることだけを根拠に読み、分からない箇所は分からないと指摘します。

# タスク
以下の原稿を読み、次の観点で問題点を挙げてください。文章の修正は不要です。

# 観点
1. 根拠が示されていない断定(該当箇所を引用)
2. AだからBという説明で、間に説明が抜けている箇所
3. 前半と後半で矛盾している記述
4. 読者が当然抱くはずなのに、答えられていない疑問(3つまで)
5. 一般論で終わっていて、具体策が書かれていない段落

# 出力形式
観点ごとに見出しを付け、該当箇所の引用と、必要な補足内容を1文で示す
該当がない観点は「該当なし」と記載する

# 原稿
(ここに貼り付け)

注意

AIの校正は見落としが起こります。特に固有名詞の誤りや、文脈依存の誤変換は検出されないことがあります。公開前の最終確認は必ず人が行ってください。また、契約書・規程・広告表現など、法令や社内規程に関わる文書は、AIの指摘だけを根拠にせず、担当部署や専門家に確認することをおすすめします。

校正ルールを自社仕様にする

チームで使うなら、指摘の基準をそろえておくと効果が持続します。準備しておくと便利なのは次の3点です。

  • 用語集:自社サービス名、部署名、統一したい語句とその表記
  • 禁止表現リスト:誇張表現、断定表現、過去に指摘を受けた言い回し
  • 良い文例:社内で「これが基準」とされている文章を2〜3本

これらをプロンプトの前半に貼り付けておけば、レイヤー別の指示と組み合わせるだけで、自社の基準に沿った校正になります。ルールを更新したときは、保存してあるプロンプトも合わせて直す運用にしておくと、指摘のぶれを防げます。

よくある質問

Q. 一度にすべてのレイヤーを見てもらうことはできませんか?

A. 可能ですが、指摘が浅くなりやすく、書き換えが混ざる原因にもなります。原稿量が多い場合ほど、レイヤーを分けて2〜3回に分けたほうが結果的に速く終わります。

Q. 誤字脱字の検出精度はどのくらいですか?

A. 明らかな脱字や助詞の誤りは検出されやすい一方、意味の通る誤変換は見落とされることがあります。数値や固有名詞は特に検出しづらいため、人の確認を前提にしてください。

Q. 長い原稿はどう扱えばよいですか?

A. 見出し単位など、意味のまとまりで分割して同じプロンプトを適用する方法が扱いやすいでしょう。分割すると全体の一貫性は見えなくなるため、論理チェックだけは章単位や全体で別途行うのがおすすめです。

Q. 自分の文体が失われないか心配です

A. 「変えてはいけないもの」を明示し、指摘リスト形式で返させれば、採否を自分で決められます。文体を守りたい場合は、自分の過去原稿を1本添えて「この文体を基準にする」と伝える方法も有効です。

Q. 校正専用ツールとの違いは何ですか?

A. 表記ゆれや辞書ベースの検出は専用ツールが安定しています。一方、論理の飛躍や説明不足といった文脈的な指摘は生成AIのほうが対応しやすい領域です。両方を併用し、役割を分けるのが現実的でしょう。

まとめ

AI校正がうまくいかない原因の多くは、性能ではなく指示の粒度にあります。誤字脱字、表記ゆれ、読みやすさ、論理という4つのレイヤーを分け、1回に1種類だけ依頼する。そして書き換えではなく指摘リストを返させる。この2点だけで、実用度は大きく変わります。

まずは公開前の原稿を1本用意し、誤字脱字の指摘プロンプトと論理チェックのプロンプトを続けて実行してみてください。自社の用語集と禁止表現リストを足していけば、チーム共通の校正基準としてそのまま運用できます。

  • 「校正して」は複数作業の総称。レイヤーを分けて依頼する
  • 書き換えではなく指摘リスト形式で返させ、採否は自分で決める
  • 推敲では「変えてはいけないもの」を先に明示する
  • 論理チェックは予備知識のない読者役に依頼すると効果的
  • 最終確認は必ず人が行い、規程に関わる文書は担当部署に確認する