業務・職種別の活用法

マーケティング業務の生成AI活用|企画から効果測定までの使い方

マーケティング業務は、企画・制作・配信・効果測定と工程が多く、担当者が少人数だと一人が全工程を抱えがちです。「企画のアイデアが枯れる」「コピーの案出しに時間がかかる」「レポート作成だけで半日消える」といった詰まりは、多くの現場で共通しています。

この記事では、マーケティング業務を5つの工程に分解し、それぞれで生成AIをどう使うかを手順として示します。企画とコピー制作にそのまま使えるプロンプト例、そして表現の法令面で人が必ず確認すべきポイントも合わせて解説します。

この記事でわかること

  • マーケ業務の5工程それぞれで、生成AIが向く作業・向かない作業
  • 企画・訴求軸出しをAIで広げる具体的な手順とプロンプト例
  • 記事・SNS・広告コピーを量産するときの品質の担保方法
  • 効果測定レポートの下書きにAIを使う際の注意点

マーケティング業務を5工程に分けて考える

生成AIを「マーケに使う」とひとくくりにすると、期待と実態がずれます。まずは工程を分け、それぞれでAIが担うのは何%くらいかを決めておくことをおすすめします。

次の表は、マーケティングの主要工程ごとに、生成AIの向き不向きを整理したものです。

工程 主な作業 AIの得意度 人が必ず担うこと
①調査・整理 顧客の声の分類、競合表現の整理 高い 元データの収集と正誤確認
②企画 訴求軸の案出し、企画の骨子 高い 自社の戦略との整合判断
③制作 コピー・記事・台本の下書き 高い 事実確認と法令表現のチェック
④配信・運用 配信設定、入札調整 低い ツール上での実作業と判断
⑤効果測定 数値の解釈、レポート文章化 中程度 数値の抽出と因果の判断

ポイントは、④配信・運用の実作業はAI向きではないという点です。ここを無理にAI化しようとすると、かえって確認作業が増えます。

調査・企画工程での使い方

企画工程でありがちな失敗は、AIに「いい企画を考えて」と丸投げすることです。この聞き方では、どの業界にも当てはまる無難な案しか返ってきません。

手順1:自社が持つ一次情報を渡す

問い合わせフォームの自由記述、営業が聞いた顧客の言葉、アンケートの回答、既存記事のアクセス上位。こうした自社にしかない情報を渡すほど、出力は具体的になります。個人が特定できる記述は削除してから貼り付けてください。

手順2:分類・共通点の抽出をさせる

「以下の顧客の声を、悩みの種類で5〜7グループに分類し、各グループに名前を付けてください」といった依頼が有効です。人が読むと印象に引っ張られますが、AIは機械的に分類してくれます。

手順3:訴求軸を広げる

分類結果をもとに、訴求の切り口を量産させます。次のプロンプトは、そのまま使えます。

プロンプト例

あなたはBtoBマーケティングのプランナーです。以下の情報から、施策の訴求軸を洗い出してください。

【商品・サービス】
(何を、いくらで、誰に提供しているか)

【想定顧客】
・業種/規模:
・担当者の役職:
・現在の解決方法(自社を使っていないときは何をしているか):

【顧客の生の声(個人が特定できる情報は削除済み)】
(問い合わせやアンケートの記述をここに貼る)

【出力形式】
1. 訴求軸を12個。「顧客が感じている不便」を主語にして書く
2. 各軸について、刺さりそうな相手の状況を1行で添える
3. 12個を「すぐ試せる/検証が必要」の2つに仕分ける
4. 根拠が顧客の声にない軸には【仮説】と付記する

ポイント

案は多めに出させ、人が選ぶ形にします。10個以上出させると、後半に想定外の切り口が混じることがあります。最初の3個は無難な案になりがちなので、そこで止めないのがコツです。

制作工程:コピー・記事・SNS投稿

制作はAIの効果が最も見えやすい工程ですが、品質のばらつきが出やすい工程でもあります。鍵になるのは条件の書き方です。

コピーは「制約」を先に決める

文字数、禁止表現、読み手の状態、遷移先で何をしてほしいか。この4点を先に指定すると、使える案の割合が上がります。指定しないまま出させると、ほとんどが没案になります。

プロンプト例

以下の条件で広告見出しの案を作ってください。

【遷移先ページの内容】
(ページで何を伝え、何をしてもらうか)

【読み手の状態】
(例:課題は自覚しているが、比較検討はまだ始めていない)

【制約】
・全角15文字以内
・「業界No.1」「必ず」「絶対」など、根拠を示せない断定表現は使わない
・実績数値は入れない(こちらで後から確認して差し込む)
・煽り表現や不安をあおる書き方は避ける

【出力形式】
・案を20個、箇条書きで
・各案の右に、狙っている感情や状況を10文字程度で添える
・最後に、20個のうち特に検証価値が高い3つとその理由

記事コンテンツは「構成」だけAIに任せる発想も有効

SEO記事などの長文は、本文まですべてAIに書かせると内容が薄くなりがちです。構成案と見出しの検討まではAI、本文は担当者が自社の知見を入れて書く、という分担のほうが結果的に速いケースもあります。

注意

広告や商品説明の表現には、景品表示法や薬機法などの規制がかかります。生成AIは、こうした法令に適合しているかを保証しません。効果効能をうたう表現、最上級表現、比較表現を使う場合は、必ず社内の確認フローに通し、判断が難しい場合は専門家に確認してください。

効果測定・レポート工程での使い方

レポート作成は、数値の抽出と文章化に分けて考えます。数値の抽出はツールで、文章化はAIでが基本方針です。

やってはいけないのは「数字の計算をAIに任せる」こと

対話型AIは計算を誤ることがあります。CVRや前月比といった数値は、表計算ソフトや分析ツール側で確定させ、確定済みの数字だけをAIに渡してください。

AIに向くのは「解釈の候補出し」

「この数値変動について、考えられる要因を5つ挙げ、それぞれ確認方法を添えて」という使い方は有効です。担当者が思いつかなかった仮説が混じることがあります。ただし、AIが挙げた要因は仮説であって結論ではない点を、レポートの読み手にも明示しておきましょう。

レポート文章の下書き

確定した数値と、人が決めた結論を渡し、「経営会議向けに600字でまとめて」と依頼します。同じ内容を現場向け・経営向けと書き分ける作業も、AIが得意とするところです。

チーム全体で品質を保つ仕組み

個人が便利に使うだけなら準備は不要ですが、チームで使うなら最低限の決めごとが必要です。

  • 入力してよい情報の範囲…未公開の施策情報や顧客の個人情報は入力しない、など
  • チェック体制…外部に出す文言は、AI利用の有無にかかわらず人が確認する
  • プロンプトの共有…成果が出た指示文をチームの共有ドキュメントに蓄積する
  • 使わない工程の明示…数値計算や配信設定など、AIに任せない領域を書き出しておく

ツールの機能や料金プランは変わりやすいため、社内ルールを作る際は「2026年時点の仕様」と日付を添えて記録し、定期的に見直すことをおすすめします。

よくある質問

Q. AIが書いたコピーは、そのまま広告に使えますか?

A. 事実確認と法令面のチェックを経ないまま使うのは避けてください。特に効果や実績に触れる表現は、根拠資料との照合が必須です。AIの出力は「候補案の山」であり、選定と検証は人の仕事だと考えるのが安全です。

Q. 少人数のチームでも導入する価値はありますか?

A. むしろ少人数のほうが効果を感じやすい傾向があります。案出しの相手がいない、レビューしてくれる人がいないという状況で、たたき台を出す相手として機能するためです。ただし効果には個人差があり、慣れるまでに数週間かかることもあります。

Q. 競合の広告文をAIに分析させてもよいですか?

A. 公開されている表現を整理・分類する目的であれば一般的な作業です。ただし、他社の文章をほぼそのまま流用すると著作権や不正競争の問題になり得ます。傾向の把握までにとどめ、自社の表現は書き下ろしてください。

Q. ペルソナ設定をAIに作らせてもよいですか?

A. 一次情報なしで作らせたペルソナは、一般論の寄せ集めになりがちです。実際の顧客の声や商談記録を渡したうえで整理させる使い方であれば有用です。あくまで既存情報の構造化と考えてください。

Q. 画像や動画の生成もマーケで使えますか?

A. ラフ案やイメージ共有には使えます。ただし、実際の商品写真の代わりに生成画像を使うと、実物と異なる印象を与える恐れがあります。商品を表す画像は実写を使い、生成物は社内検討用にとどめる運用が無難です。

まとめ

マーケティング業務における生成AIの使いどころは、「調査の整理」「企画の案出し」「制作の下書き」「レポートの文章化」に集中しています。逆に、配信設定の実作業や数値計算、法令面の判断は人が担う領域です。工程を分けて役割を決めるだけで、期待とのずれはかなり減らせます。

導入の際は、一次情報をどれだけ渡せるかが成果を分けます。自社の顧客の声、商談の記録、既存コンテンツの反応。これらを整理してAIに渡す準備そのものが、マーケティングの基礎体力を上げる作業にもなります。まずは案出しの一工程から試してみてください。

  • マーケ業務を5工程に分け、AIに任せる範囲を工程ごとに決める
  • 企画は一次情報を渡し、案を多めに出させて人が選ぶ
  • コピーは文字数・禁止表現・読み手の状態を先に指定する
  • 数値計算はツールで確定させ、AIには文章化と仮説出しを任せる
  • 広告表現の法令チェックは人が行い、迷う場合は専門家に確認する