プロンプト・テクニック

議事録要約プロンプトのテンプレート|決定事項と宿題を確実に拾う

会議の文字起こしをAIに要約させたら、話し合いの流れはきれいにまとまったのに、肝心の「誰が何をいつまでにやるのか」が抜けていた。そんな議事録を配っても、翌週には誰も動いていない——これは要約の精度ではなく、指示の設計に原因があります。

議事録に必要なのは、話の要約ではなく決定事項と宿題(アクションアイテム)の確定です。この記事では、決定と宿題を取りこぼさないためのプロンプトの型と、そのまま貼って使えるテンプレートを紹介します。文字起こしが荒くても使える工夫まで含めて整理しました。

この記事でわかること

  • 議事録要約が「使えない」ものになる3つの原因
  • 決定事項・宿題・保留を分けて抽出させるプロンプトの型
  • 担当者と期限の欠落を、AIに自動で指摘させる方法
  • そのままコピーできるテンプレートと、社外共有用への整形手順

議事録の要約でつまずく3つの原因

まず、なぜ普通に要約を頼むと使えない議事録になるのかを整理します。

第一に、要約と抽出は目的が違うことです。要約は情報を圧縮する作業ですが、議事録で必要なのは特定の情報を漏れなく取り出す抽出作業です。「要約して」と頼むと、決定事項が長い議論の一文に埋もれてしまいます。

第二に、会話では担当者や期限が省略されがちなことです。「じゃあそれ、こっちで見ときます」といった発言から、AIは誰の担当か判断できません。ここを推測で埋められると、かえって危険な議事録になります。

第三に、決まったことと決まらなかったことが混ざる点です。「検討する方向で」という発言は決定なのか保留なのか、区別しないまま並べると、後で認識のずれが起きます。

悪い例と良い例

典型的な依頼と、改善版を比べてみます。

プロンプト例

【悪い例】
この会議の文字起こしを議事録にまとめてください。

【良い例】
以下の文字起こしから、議事録を作成してください。要約ではなく「抽出」を
行ってください。

# 出力する4つのセクション(この順番で)
1. 決定事項 … その場で結論が出たこと
2. アクションアイテム … 誰かが会議後に実行すること
3. 保留・持ち帰り … 結論が出ず、次回以降に回ったこと
4. 共有された情報 … 決定ではないが記録すべき報告・数値

# ルール
- 各項目は発言者の言葉ではなく、第三者が読んでわかる文に直す
- 文字起こしに書かれていない担当者・期限を推測で補わない
- 不明な場合は「担当未定」「期限未定」と明記する
- 決定か保留か判断できない項目は「3. 保留」に入れ、末尾に(要確認)と付ける
- 雑談・脱線は記録しない

# 文字起こし
(ここに貼り付け)

良い例で効いているのは、「要約ではなく抽出」という宣言と、4つのセクションの定義です。特に「保留」の枠を用意しておくと、AIが無理に決定事項へ分類することがなくなります。判断できないものの受け皿を作るのが要点です。

アクションアイテムを確実に拾う

宿題の抽出は、議事録で最も価値が高い部分です。ここは表形式で出力させ、欠けている情報を明示させます。

指定すべき列は「タスク/担当者/期限/完了の判断基準/関連する決定事項」の5つです。特に「完了の判断基準」を入れると、曖昧なタスクが減ります。「調べておく」ではなく「3社の見積を取得し共有する」まで具体化されるためです。

プロンプト例

文字起こしから、会議後に実行が必要なタスクだけを抽出してください。

# 出力形式
表形式。列は左から順に固定:
タスク内容 / 担当者 / 期限 / 完了の判断基準 / 発言の根拠(該当箇所を20字以内で引用)

# 抽出ルール
- 「やっておきます」「確認します」「持ち帰ります」などの発言はすべて拾う
- 明言されていない担当者・期限は「未定」と書く。絶対に推測で埋めない
- 完了の判断基準が発言から読み取れない場合は「要定義」と書く
- 1つの発言に複数のタスクが含まれる場合は、行を分ける

# 出力後に追記すること
「確認が必要な項目」という見出しを作り、担当者または期限が「未定」の
タスクを箇条書きで再掲してください。会議の最後に確認すべきリストとして
使います。

ポイント

「発言の根拠を20字以内で引用」という指定は、検証を一気に楽にします。抽出結果が本当に会議で言われたことか、引用を見るだけで確認できるためです。AIが文脈から作り出したタスクも、引用が不自然になるので気づけます。

会議の種類で使い分ける

すべての会議に同じテンプレートが適するわけではありません。会議の性質によって、重視すべきセクションは変わります。

代表的な3種類について、押さえるべき点を比較しました。

項目 定例進捗会議 意思決定会議 ブレスト・企画会議
最重要セクション アクションアイテム 決定事項と決定理由 出たアイデアの一覧
記録すべき数値 進捗率・残タスク数 予算・期限 特になし
担当者の明記 必須 必須 不要
反対意見の記録 不要 必須(後の説明に使う) 推奨
要約の粒度 簡潔でよい 経緯まで残す 網羅を優先

意思決定会議では、決定内容だけでなく決定に至った理由と却下された選択肢を残すことが重要です。数か月後に「なぜこうしたのか」を問われたとき、記録がないと再検討からやり直しになります。

プロンプト例

この会議は意思決定を目的としたものです。以下の形式で記録を作ってください。

# 決定ごとに、次の5点をセットで書く
1. 決定内容(1文、体言止めを避ける)
2. 決定した理由(会議で述べられた根拠のみ。推測は書かない)
3. 検討したが採用しなかった選択肢と、その理由
4. この決定に伴って必要になる作業(担当者・期限つき)
5. 決定の前提となっている条件(「予算が承認されれば」など)

# ルール
- 決定が複数ある場合は、決定1・決定2…と番号を付けて並べる
- 反対意見や懸念が出た場合は「出された懸念」として必ず記録する
  (結論と異なる意見も削除しない)
- 会議で言及されていない理由を補完しない。理由が語られていない決定は
  「理由の言及なし」と書く

# 文字起こし
(ここに貼り付け)

文字起こしが荒いときの対処

自動文字起こしは、専門用語や社名を誤変換することがよくあります。そのまま投げると、誤変換を含んだまま議事録になります。事前に用語リストを渡しておくと、この問題はかなり軽減できます。

  • 参加者の氏名と役職を一覧で渡す(発言者の特定精度が上がる)
  • 社内用語・製品名・略語のリストを渡す(誤変換の補正に使える)
  • 会議の目的とアジェンダを先に伝える(重要度の判断材料になる)
  • 「明らかな誤変換は補正してよいが、補正した箇所は一覧で報告する」と指示する

補正箇所を報告させるのがコツです。勝手に直されると、誤変換だったのか元の発言だったのかがわからなくなります。一覧が出てくれば、数十秒で目視確認できます。また、用語リストは一度作れば毎回使い回せるため、部署で共有しておくと全員の手間が減ります。

注意

議事録は、人事情報や取引条件など機密性の高い内容を含むことがあります。文字起こしをAIに入力する前に、利用するサービスのデータ取り扱い方針と社内の情報管理ルールを確認してください。参加者の同意なく録音・文字起こしを行わないことも、運用上の前提になります。

配布用に整える最後のひと手間

抽出が終わったら、読み手に合わせて整形します。社内向けと社外向けでは、残すべき情報が異なります。社外共有版では、内部の検討過程や個人名を落とす必要があります。

この作業を手作業でやると、消し忘れが起きます。AIに整形させ、削除した箇所を一覧で報告させると、抜けの確認が容易になります。ただし最終確認は必ず人が行ってください。機密の判断は、社内の事情を知っている人にしかできない部分です。

プロンプト例

先ほど作成した議事録から、取引先へ共有する版を作ってください。

# 削除するもの
- 社内の個人名(「弊社担当」「開発チーム」などの役割名に置き換える)
- 社内の検討過程、意見の対立、却下された案
- 社内コストや工数に関する数値

# 残すもの
- 先方に関係する決定事項
- 先方に依頼するタスク(担当・期限つき)
- 次回の打ち合わせ日程と議題

# 形式
- 冒頭に「日時 / 場所 / 出席者(社名と役職のみ)/ 目的」を4行で記載
- 本文は「決定事項」「ご依頼事項」「次回」の3セクション
- 敬体で統一し、社内用語は一般的な言い換えに直す

削除・置換した箇所は、最後に一覧で報告してください。

よくある質問

Q. 長い文字起こしを一度に入れても大丈夫ですか?

A. ツールが受け付ける分量には上限があり、長すぎると後半の抽出が雑になることがあります。1時間を超える会議は、アジェンダの区切りごとに分けて処理し、最後に結果を統合するほうが安定します。

Q. 担当者が「未定」ばかりになってしまいます。

A. それは会議自体で担当が決まっていなかったというサインです。AIが推測で埋めるより正確な状態なので、そのリストを持って関係者に確認するのが正しい使い方です。次回以降、会議の最後に担当と期限を口頭で確認する運用にすると解決します。

Q. 発言者が誰か特定できないときはどうしますか?

A. 参加者名簿を先に渡すと精度は上がりますが、完全ではありません。特定できない場合は「発言者不明」と書かせ、決定に関わる重要な部分だけ人が確認してください。誤った発言者の記載は、後々のトラブルになります。

Q. AIが作った議事録はそのまま配布してよいですか?

A. 配布前に、決定事項とアクションアイテムだけは必ず人が確認してください。この2つは実務に直結するため、誤りの影響が大きい部分です。引用の根拠を出力させておけば、確認は数分で終わります。

Q. 録音がなく、手書きメモしかない場合も使えますか?

A. 使えます。断片的なメモでも、同じテンプレートで整理させると抜けが見えてきます。ただし情報量が少ない分「未定」「要確認」が増えるため、それを埋める作業が前提になります。

まとめ

議事録づくりでAIに頼むべきなのは、要約ではなく抽出です。「決定事項」「アクションアイテム」「保留」「共有情報」の4区分を定義し、判断できないものの受け皿として保留の枠を用意する。これだけで、実務で使える議事録に近づきます。

そして、担当者と期限を推測で埋めさせないことが最大のポイントです。「未定」が並ぶ議事録は失敗ではなく、会議で決めきれなかった事実を映した正しい記録です。そのリストを確認材料として使えば、会議そのものの質も上がっていきます。

  • 「要約ではなく抽出」と宣言し、4つのセクションを定義して出力させる
  • アクションアイテムは表形式で、担当・期限・完了基準・根拠の引用を必須にする
  • 担当者と期限の推測を禁じ、「未定」を確認リストとして活用する
  • 意思決定会議では、決定理由と却下した選択肢まで記録に残す