業務・職種別の活用法

教育現場の生成AI活用|授業準備と教材作成で使えるプロンプト

授業の準備、教材の作成、小テストの作問、保護者向けのお便り。教育現場の仕事は授業時間の外側に大量に広がっていて、そのほとんどが「文章を作る作業」です。時間が足りず、教材の質を上げたくても手が回らないという声は珍しくありません。

この記事では、授業準備と教材作成に絞って、生成AIの具体的な使い方を紹介します。そのままコピーして使えるプロンプト例、作業ごとの向き不向きの比較表、そして児童生徒の個人情報を扱ううえで必ず守るべきルールまで、現場で判断できる形にまとめました。

この記事でわかること

  • 授業準備のどの工程に生成AIを組み込むと時間が浮くか
  • 練習問題・小テスト・ワークシートを作るときの依頼のしかた
  • 教材作成にそのまま使えるプロンプト例
  • 児童生徒の個人情報の扱いと、学校で先に確認すべきこと

教育現場で生成AIが効くのは「素材づくり」の工程

授業づくりは、ねらいを定める、素材を集める、活動を組む、評価方法を決める、という流れで進みます。このうちねらいと評価は教員が担うべき中核ですが、素材づくりは分量が多く、時間を最も食う工程です。

生成AIは、この素材づくりの部分で力を発揮します。同じ内容を難易度別に書き分ける、例題を10問追加する、説明を子ども向けの言葉に置き換える。いずれも人間がやると単純に時間がかかる作業で、しかも出来上がったものは教員が読めば正しさを判断できます。

「作らせる」のではなく「増やす・言い換える」

もっとも成功しやすいのは、教員がすでに持っている素材を渡して、量を増やしたり形を変えたりする使い方です。ゼロから単元計画を作らせるより、手元のプリントを渡して「同じ形式で難易度を下げた版を作って」と頼むほうが、確実に使えるものが返ってきます。

注意

生成AIは事実関係を誤ることがあります。歴史上の年号、科学的な説明、統計の数値などは、教材として配布する前に必ず教科書や信頼できる資料で確認してください。特に子ども向けにわかりやすく言い換えた文章は、正確さが落ちている場合があります。教材として使う責任は、最終的に教員が負います。

授業準備での使い方

導入のアイデアを複数出させる

単元の導入で子どもの関心をどう引くかは、毎回悩むところです。「小学5年生に『割合』を導入する場面のアイデアを、身近な題材で7つ挙げて」と依頼すると、自分では思いつかなかった切り口が混ざります。採用するかどうかは教員が判断すればよく、選択肢が増えること自体に価値があります。

説明の言い換えを用意する

一度の説明で全員が理解することはまずありません。同じ内容について、図で説明する版、身近な例で説明する版、手順を分解した版と、複数の説明の型を事前に用意しておくと、その場で切り替えられます。

子どもが出しそうな疑問を先読みする

「この内容について、小学生からよく出る質問と、つまずきやすい点を挙げて」と聞いておくと、授業中の対応に余裕が生まれます。全部が当たるわけではありませんが、想定の幅が広がります。

教材作成での使い方

教材作成では、条件を細かく指定するほど使えるものが返ってきます。学年、単元、問題数、形式、難易度、避けたい表現などを最初に書いてください。

プロンプト例

あなたは経験豊富な小学校教員です。
以下の条件で練習問題を作成してください。

【対象】小学4年生
【単元】わり算の筆算(2桁÷1桁、あまりあり)
【問題数】計算問題8問、文章題4問
【条件】
・文章題は学校生活や買い物など身近な場面にする
・特定の家庭環境を前提とする設定は避ける
・易しい順に並べ、最後の2問はやや発展的にする
・解答と、途中式つきの解説も付ける
・つまずきやすいポイントを、問題ごとに一言で添える

【出力形式】
1. 問題(番号つき)
2. 解答・解説
3. 指導上の留意点(全体で3〜5行)

難易度別のワークシートを一気に作る

手元のプリントを貼り付け、「この内容で、支援が必要な子ども向けにヒント欄を追加した版」「早く終わった子ども向けの発展問題」を続けて作らせると、個に応じた指導の準備が短時間で整います。

プロンプト例

以下は授業で使っているプリントの内容です。
これをもとに、難易度の異なる3種類の版を作ってください。

【A:基礎】ヒントと解き方の手順を各問題に添える
【B:標準】元のプリントと同じ難易度で、数値だけ変えた別バージョン
【C:発展】考え方は同じで、条件が1つ増えた応用問題

いずれも問題数は元と同じにし、解答も付けてください。
子どもが読む文章は、対象学年で習う漢字の範囲を意識してください。

【元のプリント】
(ここに問題文を貼り付け)

お便りや文書の下書き

学級通信、行事の案内、保護者向けの連絡文なども下書きを作らせると時間が浮きます。ただし実際の児童生徒名や家庭の事情は絶対に入力しないでください。「A児」「保護者B」と伏せた状態で文面を作り、完成後に自分の手元で差し替えます。

作業ごとの向き不向き

教育現場の作業を、AIへの任せ方の観点で整理すると次のようになります。

作業 AIの役割 教員が必ず担う部分 個人情報の扱い
練習問題の作成 問題と解説の生成 内容の正誤確認 入力しない
説明の言い換え 複数の説明案の提示 学年に合うかの判断 入力しない
単元計画 骨子案の提示 ねらいと評価規準の設定 入力しない
学級通信の下書き 文面の生成と推敲 事実確認と最終判断 氏名は伏せる
個別の評価文 原則として任せない 教員自身が記述 入力しない
いじめ・進路等の相談 使わない 校内体制で対応 入力しない

児童生徒の個人情報は入力しない

教育現場でもっとも重要な線引きがここです。学校が扱う情報には、氏名や成績だけでなく、家庭状況、健康状態、支援の記録など、極めて機微なものが含まれます。

  1. 氏名・成績・出欠・所見は入力しない:個人が特定できる情報は、一般的なチャット型サービスに入力しない前提で運用します
  2. 置き換えて使う:どうしても個別の状況を相談したい場合は、「小学3年生の児童」「計算に時間がかかる傾向がある」のように、特定できない形に一般化します
  3. 設置者のルールを確認する:教育委員会や学校法人が定めるガイドライン、利用を認めているサービスの範囲を必ず先に確認します
  4. 指導要録や通知表の所見は教員が書く:評価は教員の専門的判断であり、記録としての責任も伴います

文部科学省をはじめとする関係機関からは、学校での生成AI利用に関する考え方が示されており、内容は随時更新されています。導入や運用の判断は、最新のガイドラインと自治体・学校の規程を確認したうえで行ってください。

ポイント

校内で使い始めるときは、個人でこっそり試すより、学年会や教科会で「この作業に使ってみる」と共有したほうが安全で、しかも早く広がります。うまくいったプロンプトを共有フォルダに集めておくと、翌年の教材準備が大きく楽になります。

児童生徒が使う場合に考えること

教員の校務利用と、児童生徒自身が使う場面は、まったく別の話として考える必要があります。学習者が使う場合は、利用規約上の年齢制限、情報の真偽を確かめる力、課題として提出する際の扱いといった論点が加わります。

導入するのであれば、「AIの答えが正しいとは限らない」ことを体験させる授業を先に置く、出典を確認する習慣を組み込む、提出物での使用範囲を明示するといった設計が必要です。この判断は個々の教員だけで決めず、学校としての方針に沿って進めてください。

よくある質問

Q. 生成AIで作った教材をそのまま配ってよいですか?

A. 必ず教員が内容を確認してから配布してください。事実の誤り、学年に合わない語彙、不適切な設定が混ざることがあります。特に文章題の場面設定は、特定の家庭環境を前提にしていないかという視点でも見直すことをおすすめします。

Q. 通知表の所見をAIに書かせてもよいですか?

A. 児童生徒の氏名や個別の状況を入力すること自体に問題があるため、避けるべきです。所見は教員の専門的な観察に基づく評価であり、記録としての責任も伴います。表現の一般的な言い回しを参考にする程度にとどめ、内容は教員自身が記述してください。

Q. 学校で使ってよいかどうかは誰に聞けばよいですか?

A. まずは管理職と、学校の情報担当に確認してください。設置者である教育委員会や学校法人がガイドラインを定めている場合が多く、利用できるサービスや入力してよい情報の範囲が指定されていることがあります。個人の判断で始めないことが大切です。

Q. どのくらい時間が浮きますか?

A. 教科や学年によって差が大きく、一律の数字は示せません。問題づくりやプリントの難易度別展開のように、分量が多く形式が決まっている作業ほど効果が出やすい傾向があります。まずは1単元分の練習問題づくりだけで試し、実感で判断するのが確実です。

Q. 保護者に説明を求められたらどう答えますか?

A. 「教材の下書きや事務文書の作成に使っており、児童生徒の個人情報は入力していない」「内容は必ず教員が確認している」という2点を明確に伝えられる運用にしておくことが重要です。学校としての説明方針は、管理職と事前にすり合わせておくと安心です。

まとめ

教育現場での生成AIは、授業のねらいや評価といった中核を置き換えるものではありません。効くのは素材づくりの工程です。練習問題を増やす、説明を言い換える、難易度別の版を用意する。時間はかかるが判断は難しくない作業をAIに寄せることで、子どもと向き合う時間を確保しやすくなります。

同時に、学校は極めて機微な個人情報を扱う場でもあります。児童生徒の氏名や状況は入力しない、教材は必ず教員が確認してから配る、設置者のガイドラインを先に確認する。この3点を守ったうえで、まずは1単元分の練習問題づくりから試してみてください。

  • ねらいと評価は教員が担い、素材づくりの工程にAIを寄せる
  • ゼロから作らせるより、手元の教材を渡して増やす・言い換えるほうが確実
  • 児童生徒の氏名・成績・家庭状況は入力せず、一般化した形で相談する
  • 導入前に管理職・情報担当と、設置者の最新ガイドラインを確認する