業務・職種別の活用法

事務職の生成AI活用|Excel作業とメール処理を時短する具体策

事務職の仕事は、一つひとつは数分で終わるのに、数が多いために一日が埋まってしまう作業の集合体です。Excelの関数を調べる時間、メールの書き出しで止まる時間、議事録を清書する時間。どれも「大変ではないが、地味に時間を食う」種類の作業です。

この記事では、事務職の代表的な業務であるExcel作業とメール処理に絞り、生成AIで具体的に何をどう時短できるのかを整理します。そのままコピーして使えるプロンプト例、AIに向く作業と向かない作業の比較表、そして社内データを扱ううえで外せない注意点までまとめました。

この記事でわかること

  • Excel作業のうち、生成AIで時短できる部分とできない部分の切り分け
  • 関数やマクロを「日本語で説明して作ってもらう」具体的な手順
  • メールの下書き・要約・言い換えに使えるプロンプト例
  • 社内情報を入力する前に確認すべきルールと、チェックの手順

事務職の作業を「AIに渡せる形」に分解する

生成AIを使い始めて挫折する原因の多くは、「業務を丸ごと任せようとすること」にあります。請求書処理という業務全体は任せられませんが、その中の「取引先へ送る督促メールの文面を作る」という一工程なら任せられます。

まずは自分の業務を、次の3種類に仕分けてみてください。この仕分けができれば、あとは該当する作業に順番に当てはめていくだけです。

  • 文章を作る・直す作業:メール、案内文、議事録、報告書の下書き。もっとも効果が出やすい領域です
  • 調べる・思い出す作業:Excelの関数、操作手順、言い回し。検索より速く答えにたどり着けます
  • 数える・照合する作業:データの突合、金額の集計。ここはAIに直接やらせず、AIに手順やツールを作らせて自分で実行するのが鉄則です

注意

生成AIに数値そのものを計算させると、もっともらしい間違いが混ざることがあります。合計や照合は必ずExcelの関数で計算し、AIには「その関数の書き方」を教えてもらう役割にとどめてください。金額や件数を扱う業務では、この使い分けが事故を防ぎます。

Excel作業の時短:関数は「日本語で頼む」

Excelでもっとも時間を取られるのは、実は入力そのものではなく「どう書けばいいか思い出せない」時間です。ここは生成AIがはっきり強い領域です。

やりたいことを日本語で書けば関数が出る

「A列の日付が今月で、かつB列が『未入金』の行のC列を合計したい」と日本語で書けば、SUMIFSなどを使った式が返ってきます。重要なのは、列の位置とデータの形式を具体的に伝えることです。曖昧な指示ほど、実際のシートで動かない式が返ってきます。

  • どの列に何が入っているか(例:A列=日付、B列=ステータス、C列=金額)
  • データの開始行と終了行(例:2行目から500行目まで)
  • 日付や数値の形式(例:日付は「2026/4/1」形式、金額は数値)
  • 結果をどこに出したいか

プロンプト例

あなたはExcelに詳しい事務のベテランです。
以下の条件で使えるExcelの数式を作ってください。

【シートの構成】
・A列:日付(2026/4/1 の形式)
・B列:取引先名
・C列:ステータス(「入金済」か「未入金」)
・D列:金額(数値)
・データは2行目から500行目まで

【やりたいこと】
(ここに日本語でやりたいことを書く)

【出力してほしいもの】
1. そのまま貼り付けられる数式
2. 数式の各部分が何をしているかの短い解説
3. うまく動かないときに疑うべき点を3つ

エラーの原因を聞く

「#VALUE!」「#REF!」といったエラーが出たら、式とエラー内容をそのまま貼り付けて原因を聞くのが早道です。あわせて「同じことをより簡単に書く方法があれば教えて」と添えると、式そのものが短くなることもあります。

マクロやVBAも日本語から作れる

毎月繰り返す定型処理は、VBAのコードを作ってもらうと大きく時短できます。ただしいきなり本番ファイルで実行しないことが絶対条件です。必ずコピーしたファイルで試し、意図どおり動くことを確認してから使ってください。マクロは元に戻す操作が効かないことがあります。

メール処理の時短:下書き・要約・言い換え

メールは「書き出しで止まる」「丁寧すぎて長くなる」「相手によって調整が必要」という3つの負担があります。生成AIはこのすべてに効きます。

骨子だけ渡して下書きを作る

ゼロから書くのではなく、伝えたい要点を箇条書きで渡して整えてもらう使い方が基本です。「納期が3日遅れる」「原因は部材の入荷遅延」「代替案は分納」という3点を渡せば、体裁の整った文面が返ってきます。

プロンプト例

あなたは日本のビジネスメールに慣れた事務担当者です。
以下の条件でメールの下書きを作成してください。

【宛先】取引先の担当者(面識あり・敬語は標準的な丁寧さ)
【目的】(例:納期変更のお詫びと代替案の提示)
【伝えたい要点】
・(要点1)
・(要点2)
・(要点3)
【条件】
・件名も含めて作成
・本文は300字以内
・過度にへりくだらず、事実と対応策が伝わることを優先
・こちらから相手にお願いしたい行動を最後に1文で明示

同じ内容で、丁寧度を1段上げた版も続けて出してください。

長いメールを要約する

転送されてきた長いスレッドは、貼り付けて「決まったこと・未決事項・自分がやること」の3点に整理してもらうと、読む時間が大幅に減ります。同じ形式で毎回頼めば、判断のスピードも安定します。

言い換えとトーン調整

自分で書いた文面を貼り、「もう少し柔らかく」「事実だけを簡潔に」「社外向けの表現に」と指示するだけで整います。特に断りの連絡や催促のように、書きにくい文面ほど効果を感じやすい使い方です。

ポイント

よく使うプロンプトは、テキストファイルやメモアプリに保存して使い回してください。毎回ゼロから指示を書くと、かえって時間がかかります。「督促メール用」「議事録整理用」のように名前を付けて5〜10個ためておくだけで、日々の作業がぐっと軽くなります。

作業ごとの向き不向きを整理する

事務作業のうち、どこまでAIに任せてよいかを整理すると次のようになります。

作業 AIへの任せ方 人が必ずやること 時短の効きやすさ
メール下書き 要点を渡して文面生成 事実確認と最終送信の判断
Excel関数の作成 やりたいことを日本語で依頼 実データでの動作確認
数値の集計・照合 手順や関数を作らせる 計算はExcel側で実行
議事録の整理 メモを渡して構造化 発言内容の正確性の確認
社内規程の解釈 原則として任せない 原文の確認と担当部署への照会

入力してよい情報の線引き

時短の効果が大きいぶん、情報の取り扱いは慎重さが必要です。事務職は顧客名、取引金額、社員情報など、機微な情報に日常的に触れる立場にあります。

  1. 社内ルールを最初に確認する:会社が利用を認めているサービスと、入力してよい情報の範囲を情報システム部門などに確認します
  2. 個人情報と取引先情報は入力しない:氏名、住所、電話番号、口座情報、契約金額などは削るかダミーに置き換えます
  3. 置き換えて使う:「A社」「担当者B」「金額X円」と伏せた状態で文面を作らせ、完成後に自分の手元で実際の情報に差し替えます
  4. 設定を確認する:入力内容が学習に使われるかどうかはサービスやプランで異なります。2026年時点でも変更は頻繁にあるため、最新の公式情報を確認してください

よくある質問

Q. Excelが苦手でも使えますか?

A. むしろ苦手な人ほど効果が大きい使い方です。関数名を知らなくても、やりたいことを日本語で説明すれば式が返ってきます。ただし返ってきた式が正しいかは自分で確かめる必要があるため、少量のテストデータで結果を検算する習慣をつけてください。

Q. 生成AIが作った文章だと相手に気づかれませんか?

A. 出力をそのまま送ると、やや硬く一般的な文面になりがちです。相手の名前や過去のやりとりへの言及を自分で1〜2文足すだけで、自然さは大きく変わります。AIの出力は完成品ではなく下書きとして扱うのが基本です。

Q. 無料のサービスでも十分ですか?

A. メールの下書きやExcel関数の作成といった用途であれば、無料の範囲でも実用になることが多いです。ただし利用回数や使えるモデル、データの取り扱いは有料プランと異なる場合があります。料金やプラン内容は変わりやすいため、各サービスの公式情報で最新の条件を確認してください。

Q. どのくらい時間が減りますか?

A. 業務内容によって差が大きく、一律の数字は示せません。メール1通あたり数分、関数の調べ物で10分程度といった単位の短縮が積み上がるイメージです。まずは1週間、メール下書きだけに絞って使い、体感で判断するのが確実です。

Q. 上司や同僚に使っていることを伝えるべきですか?

A. 会社の方針次第ですが、隠して使うより先に確認したほうが安全です。特に社外に出す文書や顧客情報が絡む業務では、後から問題になるより事前に相談したほうがはるかに負担が小さくて済みます。

まとめ

事務職の生成AI活用は、業務全体を置き換えるものではなく、細かい作業の一つひとつを数分ずつ削る取り組みです。Excelでは「関数を日本語で頼む」、メールでは「要点を渡して下書きを作る」。この2つを習慣にするだけで、一日の終わりの残り時間は目に見えて変わってきます。

同時に、事務職は機微な情報に触れる立場でもあります。個人情報や取引先情報は入力しない、数値の計算はAIに任せない、社内ルールを先に確認する。この3点を守れば、安心して使い続けられます。まずは今日届いたメール1通の下書きから試してみてください。

  • 業務を「文章を作る」「調べる」「数える」に仕分け、前の2つから着手する
  • Excelは関数を日本語で依頼し、計算そのものはExcel側で実行する
  • メールは要点を箇条書きで渡し、出力は下書きとして自分の言葉を足す
  • 個人情報や取引先情報は伏せて入力し、社内ルールを事前に確認する