プロンプト・テクニック

アイデア出しプロンプト集|発散と収束を分けて質を上げる方法

企画会議の前日に「とりあえずAIにアイデアを出させよう」と入力してみたものの、返ってきたのは当たり障りのない案ばかり——そんな経験はないでしょうか。生成AIは大量の案を高速に並べることが得意ですが、指示が曖昧だと平均的で無難な答えに収束しがちです。結果として「使えるアイデアが一つもない」と感じてしまいます。

原因の多くは、AIの性能ではなく発散と収束を一度に頼んでしまっていることにあります。この記事では、アイデア出しを「発散」「整理」「収束」「具体化」の4フェーズに分け、それぞれでそのまま使えるプロンプト文例を紹介します。会議準備、商品企画、コンテンツ案、業務改善など、幅広い場面で応用できる形にまとめました。

この記事でわかること

  • アイデア出しが失敗する典型パターンと、その構造的な原因
  • 発散フェーズで案の「幅」を広げる制約条件の付け方
  • 収束フェーズで評価軸を指定し、選定理由まで出させる方法
  • コピーしてすぐ使える日本語プロンプト例と、悪い例との対比

なぜAIのアイデア出しは「無難」になるのか

生成AIは、与えられた文脈の中で最も自然につながりやすい言葉を選びます。つまり指示が抽象的なほど、出力は「よくある答え」に寄っていきます。「新商品のアイデアを10個ください」という依頼は、条件が何もないため、AIにとっては最も一般的な回答が正解になってしまうのです。

もう一つの落とし穴が、発散と収束を同時に求めることです。「良いアイデアを5個出して」には、「たくさん考える」作業と「良いものを選ぶ」作業が同居しています。人間でも同時にやると質が落ちる工程で、AIも例外ではありません。

悪い例と良い例を比べる

まずは典型的な失敗プロンプトと、改善版を並べてみます。違いは「誰に」「何のために」「どんな制約で」が書かれているかどうかです。

プロンプト例

【悪い例】
新しいサービスのアイデアを10個考えてください。

【良い例】
あなたは新規事業の企画担当者です。以下の条件でアイデアを発散させてください。

# 前提
- 対象顧客: 従業員30〜100名の中小企業の総務担当者
- 解決したい課題: 備品管理と社内問い合わせ対応に時間を取られている
- 使える予算感: 初期開発300万円以内
- 制約: 新しいハードウェアは作らない(ソフトウェアのみ)

# 依頼
1. 上記の課題に対するサービス案を15個、箇条書きで出してください。
2. うち5個は「堅実な案」、5個は「他業界の仕組みを転用した案」、
   5個は「実現性を無視した極端な案」にしてください。
3. 各案は「名前」+「1〜2文の説明」のみ。
   この段階では評価や優劣のコメントは書かないでください。

良い例では、対象・課題・制約を明示したうえで、案の種類まで指定しています。「堅実」「転用」「極端」と枠を分けることで、AIは同じ方向に寄った案を並べにくくなります。また「評価はしないでください」と書くことで、発散に集中させています。

フェーズ1:発散——量と幅を確保する

発散フェーズの目的は、良い案を見つけることではありません。後で選べるだけの選択肢をそろえることです。この段階では質を求めず、15〜30個程度を目安に出させると扱いやすくなります。

幅を広げる4つの指定

  • 視点の指定:「経営者の視点」「現場担当者の視点」「新入社員の視点」など、立場を変えて案を出させる
  • 時間軸の指定:「今すぐできる案」「半年後に効く案」「3年後を見据えた案」に分ける
  • 逆張りの指定:「あえて逆をやるとしたら」「この業界の常識を1つ壊すとしたら」と問う
  • 他分野からの転用:「飲食業界の仕組みを応用すると」「ゲームの設計思想を持ち込むと」と枠を移す

ポイント

1回で終わらせず、「今の15個と重複しない案をさらに15個」と追加で依頼すると、2巡目以降に意外な案が出てくることがあります。1巡目は定番、2巡目以降が本番と考えるとよいでしょう。

プロンプト例

先ほど出してもらった15案とは重複しない発想で、さらに15案を出してください。

# 追加の視点(各3案ずつ)
1. 予算がゼロだったらどうするか
2. 担当者が1人しかいなかったらどうするか
3. 製造業・小売業など他業界の解決策を転用するとしたら
4. 5年後にこの課題が消えているとしたら、何が変わったからか
5. あえて「問題を放置する」としたら何が起きるか

各案は「名前」+「説明1〜2文」+「視点の番号」の形式で。
既出案の言い換えは禁止です。切り口そのものを変えてください。

フェーズ2:整理——似た案をまとめて構造化する

30案も並ぶと全体像がつかめません。ここでAIに整理させます。ポイントは、勝手に案を減らさせないこと。「グルーピングしてください。ただし削除はしないでください」と明記します。

切り口は「解決アプローチ別」「実装コスト別」「対象ユーザー別」など複数あります。同じリストを別の軸で整理し直すと、新たな組み合わせに気づけます。

プロンプト例

これまでに出た全30案を整理してください。

# 手順
1. 内容が近い案をまとめ、各グループに20字以内の名前を付ける(4〜6グループ)
2. 各グループに含まれる案の番号をすべて列挙する(案は1つも削除しない)
3. どこにも入らない案は「その他」として残す
4. 最後に、グループ同士を組み合わせた新しい案を3つ提案する

出力は表形式で、列は「グループ名」「含まれる案番号」「共通する狙い」。

フェーズ3:収束——評価軸を先に決める

収束で最も重要なのは、評価軸を人間が決めることです。軸をAIに任せると「実現性」「新規性」など一般的な項目が並び、自社の判断基準とずれます。会議で本当に問われる観点を3〜4個、自分の言葉で指定しましょう。

評価軸を決めるときは、5段階評価にして点数の意味も定義すると、出力のブレが減ります。「5=3か月以内に着手可能」のように、基準を具体的な状態で書くのがコツです。

フェーズごとに何を指示すべきかを整理すると、次のようになります。

項目 発散 整理 収束
目的 選択肢を増やす 全体像をつかむ 次に動く案を決める
指示する数 15〜30案 4〜6グループ 上位3案
評価 させない させない 軸を指定してさせる
与える情報 顧客・課題・制約 前段の全案 判断基準と却下理由の要求
ありがちな失敗 案が似通う 勝手に案が消える 根拠のない順位付け

プロンプト例

整理した案の中から、実行候補を絞り込んでください。

# 評価軸(各5点満点)
- 着手しやすさ: 5=3か月以内に社内リソースで着手できる / 1=1年以上かかる
- 顧客の切実さ: 5=既に他の手段でお金を払っている / 1=あれば嬉しい程度
- 差別化: 5=競合が真似しにくい / 1=すぐ模倣される
- 収益性: 5=月額課金が成立しそう / 1=単発の売上のみ

# 出力
1. 全案の評価を表にする(列: 案名 / 各軸の点数 / 合計)
2. 上位3案について、推す理由を各3文で書く
3. 上位3案の「最大の弱点」と「検証すべき前提」を1つずつ挙げる
4. 惜しくも外れた案を2つ挙げ、外した理由を書く

点数の根拠が薄い場合は「情報不足」と正直に書き、推測で断定しないでください。

注意

AIが付けた点数は、あくまで文章上のもっともらしさに基づく仮の値です。市場規模や競合状況といった外部の事実に依存する評価は、実際のデータで裏を取ってください。AIの点数を「議論のたたき台」として扱い、最終判断は人が行うことが前提です。

フェーズ4:具体化——選んだ案を実行可能にする

案を選んだら、そのままでは動けません。誰が・いつ・何をするかまで落とし込みます。ここでAIに有効なのは、「反対意見を先に出させる」使い方です。

想定される反論を先に洗い出しておくと、会議での手戻りが減ります。上長・経理・現場では懸念が異なるため、役割を指定して質問させると精度が上がります。

プロンプト例

選定した案「(ここに案名と概要を貼る)」を社内提案する準備をします。

# 依頼1: 反論の洗い出し
次の3者になりきって、それぞれ厳しい質問を3つずつ出してください。
- 予算を管理する経理部長(費用対効果を重視)
- 実際に運用する現場のリーダー(工数と負担を重視)
- 慎重派の役員(リスクと過去の失敗事例を重視)

# 依頼2: 回答案
上記9つの質問に、それぞれ3〜4文で回答案を作ってください。
数字を使う箇所は「◯◯(要確認)」と空欄にしてください。

# 依頼3: 実行計画
最初の30日でやることを週単位で箇条書きにし、
各項目に「担当(役割名)」と「完了の判断基準」を付けてください。

アイデア出しの記録を残す

発散段階で捨てた案は、条件が変われば復活します。「全案リスト」「評価表」「却下理由」の3点を残しておくと、半年後の再検討で大きな時間短縮になります。

よくある質問

Q. 発散のとき、何案くらい出させるのが適切ですか?

A. 一度に15〜30案が扱いやすい目安です。50案を超えると読み切れず整理の負荷が上がります。足りなければ「重複しない案を追加で」と複数回に分けるほうが幅が出ます。

Q. AIが出す案がどれも似てしまいます。どうすればいいですか?

A. 制約条件を追加するのが最も効果的です。予算・人数・期間・使えない手段などを具体的に書くと、AIは既定路線を外れざるを得なくなります。「他業界の仕組みを転用して」「予算ゼロなら」といった枠の指定も有効です。

Q. 評価軸はAIに考えさせてもいいですか?

A. たたき台として候補を出させるのは有効です。ただしそのまま採用せず、自社の判断基準に合わせて人が手を入れてください。軸が的外れだと以降の評価がすべてずれます。

Q. 出てきたアイデアをそのまま企画書にしてよいですか?

A. 事実確認を経ずに使うのは避けてください。市場規模や競合動向、法規制には誤りが混ざり得ます。許認可や個人情報が関わる企画では、法務や専門家に確認してください。

Q. チームでアイデア出しをする場合、AIはどう組み込めますか?

A. 人が先に案を出し、その後にAIで「抜けている視点」を補うと役割分担が明確になります。先にAIを見ると発想が引きずられやすいため、順番を意識してください。AIの出力を叩き台として配布し、会議は評価と意思決定に時間を使う形が現実的です。

まとめ

AIのアイデア出しがうまくいかない理由の多くは、発散と収束を一度に頼んでいることにあります。制約と視点を与えて数を稼ぎ、構造化し、自分で決めた評価軸で絞る。この順番を守るだけで案の質は変わります。

最も重要なのは、最終判断を人が担うことです。AIの評価は文章としての妥当性に基づく仮の値にすぎません。発散の幅と整理の速さをAIに任せ、意思決定の責任は人が持つ。この分担が実務で機能する使い方です。

  • 発散・整理・収束・具体化の4フェーズに分け、1回のプロンプトで欲張らない
  • 発散では「評価しないでください」と明記し、視点・時間軸・逆張りで幅を作る
  • 収束では評価軸と点数の意味を自分で定義し、却下理由まで出させる
  • 点数や市場情報は事実確認の対象。全案リストと却下理由は記録して再利用する